フットワーク、ペルビックリフトは基本のエクササイズであり、凡庸性が高くたくさんの方に活用できるエクササイズです。
それぞれのエクササイズで起こりやすい代表的な代償動作と、その原因や改善のためのプローチ方法について学習します。
フットワークで起こりやすい代償動作
フットワークで起こりやすい代償動作についてです。
踵が下がる/上がりすぎる
機能解剖学から考える理想的な動きは、足首を安定させた上で膝関節や股関節の屈曲伸展動作を行うことですが、踵が下がり不安定になってしまう場合がよくあります。
足首と膝や股関節の動きの分離がうまくできていない・腓腹筋、足部のアーチを作る内在筋や外在筋の筋力が低下していることなどが考えられます。
また、バレエや新体操などの競技特性や関節弛緩性がある場合、踵が上がりすぎてしまうケースがあります。この状態だとハムストリングスや大臀筋が使われにくくなり、大腿四頭筋や腸腰筋とバランス良く使えません。
足関節は完全底屈・完全背屈させず中間の位置で安定させましょう。
また、足趾の関節も屈曲も伸展もせず、真っ直ぐに伸ばした状態で行います。

通常

踵が上がりすぎている

踵が下がっている
改善のアプローチ
踵が上がり過ぎている場合は、立位でピラティスボールを踏んだまま、完全底屈ではなく半底屈のポジションで股関節や膝の屈曲伸展動作を行うことなどが有効です。
踵が下がってしまう場合は、あえてバードオン・ア・パーチ(足底をバーに巻き付ける)のポジションで行うことも有効です。足の外在筋・内在筋を強化できます。
尾骨がキャリッジから離れる
フットワークは背臥位の骨盤のニュートラルポジション=尾骨はキャリッジから離れないように行いますが、尾骨が離れてしまう場合がよくあります。
特に、フットバーを押して動きだす局面、元に戻る局面で起こりやすい代償動作です。
原因としてスウェイバック姿勢で股関節屈筋が弱化していることや、ハムストリングスや大臀筋が硬くエキセントリック収縮の際の筋力が不足していること、コアの弱化などが考えられます。

ニュートラル

坐骨がキャリッジから離れた状態
改善のアプローチ
股関節屈曲の動作のみを行う、尾骨の下にダッキーなどの道具を置きクライアントの知覚を促すことが有効です。
小指球荷重
正しいポジションでは、母指球と小指球の両方に均等にバランスをかけますが、小指の方に体重が載ってしまう「小指球荷重」になってしまう方が多くいます。
原因として、下腿外旋や足部のアライメント不良が挙げられます。
大腿外側にある股関節外旋筋群の短縮などが考えられます。外旋筋群が硬くなるということは、反対にある内旋・内転筋群の弱化も考えられます。
小指球荷重の原因
・大腿筋膜張筋など、大腿外側の股関節外旋筋群の短縮
・下腿を外旋する作用のある大腿二頭筋の短縮
・足部のアライメント不良‥長腓骨筋を始めとする足部の外側縦アーチを作る筋肉の弱化や、捻挫経験がある方で足首の外側の靭帯が伸びているケース
改善のアプローチ
フットバーと母指球の間に指や道具(薄いもの)を置いて母指球が離れないように自覚してもらうことが有効です。
他には、大腿二頭筋(外ハム)のストレッチを行ったり、下腿内旋のコンディショニングや足部のアーチを強化するエクササイズを行うことも有効です。
また、動きを分離させてシンプルにすることも有効です。
フットワークの膝関節屈曲伸展のみを背屈位または底屈位で行う、足関節の底屈・背屈のみを繰り返すなどです。
足趾が曲がる・過剰に伸展する
本来は足関節の背屈は前脛骨筋、底屈は腓腹筋・ヒラメ筋がメインで働きますが、弱くなっている場合に足趾を曲げたり反らせることで代償しようとします。
この状態でエクササイズを行うと、さらにニーインや足関節の回内などの代償動作にも繋がります。
足趾は屈曲も伸展もせずに、フラットに保ちましょう。
改善のアプローチ
背屈の状態で足趾を握ったり、底屈の状態でしっかりと足趾を伸ばすようにするなど、起きてしまう代償動作のあえて逆の状態でクライアントに動作を行わせることが有効です。
ペルビックリフトで起こりやすい代償動作
ペルビックリフトで起こりやすい代償動作についてです。
顎が上がる
ペルビックリフトは顎は軽く頷いた状態で行いますが、リフォーマー・マットに関わらず起こりやすい代償動作として顎が上がることがあります。
姿勢のアライメントで胸椎の後弯が強い場合、フォワードヘッドになり頚椎の伸筋群である後頭下筋群が短縮していることが考えられます。
お尻を持ち上げると頸椎の屈曲の角度が深まるため、後頭下筋群が短縮している場合頚椎が伸展方向に引っ張られ、結果として顎が上がってしまいます。
また、背部筋群の緊張が強い人も、脊柱を屈曲できない代償として顎を上げることで伸展方向に縮めるように働いてしまいます。

正しい状態

顎が上がっている
改善のアプローチ
先に脊柱の屈曲のエクササイズを行っておく、チンタック(顎を頷くようにして頚椎を正しい位置に戻すためのエクササイズ)も有効です。
まとめ
フットワーク・ペルビックリフトで起こる代償動作は他にもあります。
どんな代償動作も根本から改善するためには、いくつか考えられる原因の中からクライアントそれぞれに当てはまる原因について仮説を考え、クライアントに合わせたアプローチを行い検証することが大切です。
アプローチ方法も1つだけではないので、さまざまな方法を試してみてクライアントに会うベストな方法を見つけてください。